マーキュリーライジング 絵に描いた餅 ★★☆☆☆
Mercury Rising / Harold Becker / 米・1998年 / 108分 / 製作費 $\6000万 / 興行収入 $9300万

自閉症のサイモンは、いわゆるサヴァン症候群に当たる。とてつもない記憶力や暗算、有名なところ
では日付を告げればそれが何曜日であるかを瞬時に特定することが出来るなど。
こういったカレンダー計算はサヴァン症候群でなくとも出来る人間は多いが、今作のサイモンは自閉症の中でも数少ないサヴァン症候群の中で、さらに希有な能力な持ち主で、同じような事が出来る人間、すなわちマーキュリーという難攻不落の暗号を、それも目視で解読出来るのは世界でも間違いなく彼一人という状況だろう。
それはタイトルにある "Mercury" という言葉。訳せば水星だが、これは端的に言うと賢さ、知性という意味だ。つまりそのままの名で出てくる暗号とサイモンの事だ。マーキュリーは他の暗号と、サイモンは他の子供とは違う、賢さ。
そしてその違いが命を狙われる原因であって、彼だけに固有する。だから彼さえ殺せば、すでにマーキュリーを土台に稼働しているシステムは安定を保つ。
という事が前提で分からなければ理解できない。それになぜ主人公がこの子を守ろうとしているのかは冒頭で、そして幾度もフラッシュバックで提示されている。すなわち贖罪だ。
と、こういう風に述べるとキッチリしてるように見えてるが、そもそもパズル雑誌に載せるのは良いとしてもそれは試験段階でやっとけよとか、しょっぱなから暗殺者の間抜けさとか、目的は子供であるのに、玄関を入ってすぐに両親を殺し、そのせいで子供に気付かれ目的を果たせずおめおめと逃げ帰る馬鹿さ。阿呆じゃなければ子供を確認してから銃を抜き両親を殺すべきだし。
そして「降格されても居残ってやる」という前フリ通りにブルース・ウィリスが事の最中、平警官として巡視に来るなりすれば良い。
その上で子供という足枷を負っての逃走劇になれば映画として保てたと思うが、ある地点からはその大事な重荷さえも預ける始末。
そういった訳で、子供と歩む前半部分まだ見れる。特に学校から帰ってくるサイモンを出迎える母親のシーンは素晴らしいが、冒頭の主人公を無視した突入による子供の死を受け指揮官にキレるウィリスという大事な場面において、ウィリスが子供の死を看取った後はカットを割ってしまう、つまり怒りが切断されたのが非常に残念だ。後半の "いい人" との口喧嘩はそれなりに持続させたのに、なぜこちらは切ってしまったのか。
さらにラストの高層ビルの背景は合成のように見えるし、なにより高さが撮れていない。サイモンがビルの縁に立っていて「危ないっ!!」という場面なのに横から水平に撮るから、高さが見えず、これはコントか何か?下はすぐに地面やろ的な疑惑が付きまとう。
他にもいろいろとあるがもう面倒くさいので、数少ない良かった所を挙げれば、ワインセラーでボスと対峙した場面は少し面白かった。もっとワインを割りながら飲酒し対話をしていればなお良かった。それぐらい。
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